製造業の課題:政策支援が空洞化を招く矛盾を克服するには
メルマガで募集している読者投稿企画「公共経営ラボ」に、日本のメーカーの支援策に関する投稿*1がありました。ということで、前回と同じく自分の考えをここにまとめておきます。投稿内容の全文とそれに対する公共経営ラボ事務局の見解はこれから配信予定のメルマガ第15号に掲載しますのでそちらをご覧ください
今回の投稿では、日本の製造業(特に家電)が存在感を失っているので何か国として支援できることはないのか、という問題提起がありました
まず現状認識として、日本のメーカーが存在感を失っているというのは仰るとおりかなと思っており、後述しますが、日本がこれまで得意としてきたハイエンド領域にも低価格路線のメーカーたちが参戦してきた結果、どんどん日本のプレゼンスが低下しているというのはニュース番組や新聞報道でもよく目にされると思います
ファクトとして、下図のとおり名目GDPに占める製造業全体(左目盛)、電子機械業(右目盛)のシェアは長期的に見ればずっと減ってます*2
行政としてもなんとか日本のものづくりは支えていきたいところ。色んな支援策が考えられます
そこで、問題の所在はどこにあるかと言うと、
というコンフリクトにあります
企業の利益はどこまで行っても売上-コストで、売上のトップラインを上げつつコストをカットさせたいというのは、競争の当事者である企業も我々行政*3も変わりません
これをさらに分解していくには人によって本当に様々な切り口があると思いますが、ここでは以下のようにざっくり分解してみましょう
- 売上=販売数量(=国内販売+海外販売)×価格
- コスト=売上原価+販管費+税金
もともと日本は、特に家電は高価格帯で強みをもっていたので、価格はこれ以上上げられないぞとなると、人口減少に伴う国内需要のシュリンクとあいまって、売上についてはもう海外向けの売上数量を引き上げるという選択肢しか(あくまでこの図式では)ありません。よく言われていることですね
海外需要を開拓するんなら、合わせて生産拠点も向こうに移して現地のニーズに素早く対応できるようにしたほうが良いなとなります。ましてや向こうのほうが人件費も安いので、まずは上流工程だけでも移そうとなると、がくっと売上原価(労務費)が減るわけです。どうせならということでどんどん現地人を雇用していくと、販管費(人件費)まで減ってくる
こうなるとメーカー各社にとっては売上にもコストにも効く海外進出という手を打たない理由がないわけです
当然行政サイドも海外進出をバックアップしたいはずなんですが、問題は、生産拠点が向こうに行ってしまうと税を取りこぼすばかりか、国内の周辺産業までもがダメージを食らう*4ことになるのです
さて、ここまで当たり前のことを書いてきましたが、こうした難しいコンフリクトの中で行政にできることはないのでしょうか?具体的にどういう対応が考えられるか、次号のメルマガで書きたいと思います