官僚日記

現役若手官僚の絶叫

メルマガ第15号を配信しました

 

8月20日付でメルマガの第15号を配信しました

今回のコンテンツはこんな感じです

[1]今週のニュースクリップ
- 入国管理庁発足へ
- サマータイム導入?
- 障害者雇用 複数省庁で水増し
[2]公共経営ラボ
- 製造業を支援するには?
- ラボ事務局のコメント
- 投稿募集
[3]官僚女子の落とし方(1)
[4]対話コーナー
- 国会閉会中は何してる?
- バックナンバーを読みたい

第15号概要

公共経営ラボの2回目の投稿を紹介しました。こちらの記事もあわせてご覧ください

smizuki.hatenadiary.com

また、やわらか連載企画「官僚男子の落とし方」の女子編をスタートさせました。最近おちゃらけ要素が少なめなのでなんとか頑張っていきます〜

対話コーナーはお寄せいただいているメールへのお返事という形で、国会が閉じてる間何してるの?という疑問におこたえしました。あとバックナンバーの配信に関する現時点での方針についても書きました

メルマガの登録は以下からどうぞ

www.mag2.com

製造業の課題:政策支援が空洞化を招く矛盾を克服するには

メルマガで募集している読者投稿企画「公共経営ラボ」に、日本のメーカーの支援策に関する投稿*1がありました。ということで、前回と同じく自分の考えをここにまとめておきます。投稿内容の全文とそれに対する公共経営ラボ事務局の見解はこれから配信予定のメルマガ第15号に掲載しますのでそちらをご覧ください

問題の所在:競争を支援するほど空洞化が進むジレンマ

今回の投稿では、日本の製造業(特に家電)が存在感を失っているので何か国として支援できることはないのか、という問題提起がありました

まず現状認識として、日本のメーカーが存在感を失っているというのは事実です。後述しますが、日本がこれまで得意としてきたハイエンド領域にも低価格路線のメーカーたちが参戦してきた結果、どんどん日本のプレゼンスが低下しているというのはニュース番組や新聞報道でもよく目にされると思います

ファクトとして、下図のとおり名目GDPに占める製造業全体(左目盛)、電子機械業(右目盛)のシェアは長期的に見ればずっと減ってます*2

f:id:smizuki:20180817231823p:plain

行政としてもなんとか日本のものづくりは支えていきたいところ。色んな支援策が考えられます

そこで、問題の所在はどこにあるかと言うと、

国がグローバルで戦えるようにメーカーの競争を支援すればするほど、彼らがもたらすはずだった経済的果実が国外に流出してしまう

というコンフリクトにあります

民間の利益最大化=国の最適解とならない

企業の利益はどこまで行っても売上-コストで、売上のトップラインを上げつつコストをカットさせたいというのは、競争の当事者である企業も我々行政*3も変わりません

これをさらに分解していくには人によって本当に様々な切り口があると思いますが、ここでは以下のようにざっくり分解してみましょう

  • 売上=販売数量(=国内販売+海外販売)×価格
  • コスト=売上原価+販管費+税金

もともと日本は、特に家電は高価格帯で強みをもっていたので、価格はこれ以上上げられないぞとなると、人口減少に伴う国内需要シュリンクとあいまって、売上についてはもう海外向けの売上数量を引き上げるという選択肢しかありません。よく言われていることですね

海外需要を開拓するんなら、合わせて生産拠点も向こうに移して現地のニーズに素早く対応できるようにしたほうが良いなとなります。ましてや向こうのほうが人件費も安いので、まずは上流工程だけでも移そうとなると、がくっと売上原価(労務費)が減るわけです。どうせならということでどんどん現地人を雇用していくと、販管費(人件費)まで減ってくる

こうなるとメーカー各社にとっては売上にもコストにも効く海外進出という手を打たない理由がないわけです

当然行政サイドも海外進出をバックアップしたいはずなんですが、問題は、生産拠点が向こうに行ってしまうと税を取りこぼすばかりか、国内の周辺産業までもがダメージを食らう*4ことになるので、両手を挙げて強力支援というわけにはいかない、という構造にあります

行政に何ができるのか

さて、ここまで当たり前のことを書いてきましたが、こうしたコンフリクトの中で行政にできることはないのでしょうか

一つ、売上とコストの式の中で触れなかった「税金」は、現状ではほとんど唯一と言って良い有効な政策ツールと言えるでしょう。また、(やや非連続的ですみませんが、)国内販売にも海外販売にも効く可能性のある魅力的な新製品の投入は行政サイドにも支援の余地が残されています

具体的にどういうことか、次号のメルマガで書きたいと思います

www.mag2.com

*1:メルマガ第13号でも取り上げさせていただきましたが、ピーターサム様、重ね重ねありがとうございます

*2:当たり前といえば当たり前ですが、かわりに増えてるのは「保健衛生・社会事業」のような社会保障色の強い産業です

*3:基本的に利益に税金がかかるからです

*4:例えば工場に勤務していた人が海外へいなくなると、彼らに毎昼弁当を提供していたお弁当屋さんが困ります。お弁当屋さんは食品加工工場で生産されたちくわをおかずに入れていたので、加工工場の売上も減ります。加工工場の売上が減ると、ちくわの原材料である魚の仕入先である水産業の漁師さんが困ります

メルマガ第14号&最近のツイート

8月7日付でメルマガの第14号を配信しました

今回のコンテンツはこんな感じです

[1]今週のニュースクリップ
- 厚労省分割?
- 東京医大 女子受験者一律減点
[2]公共経営ラボ
[3]官僚男子の落とし方(5)
[4]対話コーナー

第14号概要

ニュースクリップは、東京医大の女子一律減点問題を取り上げました。すぐに離職するから、という理由だったようですが、女性が増えたことで官庁内でどういった変化があったか、主に人事面と絡めて簡単に議論しています

連載企画「官僚男子の落とし方」は第5回。この企画は今回で最後として、次回からは予告通り女子編をやります

いつもよりボリューム少なめですみませんが、今回は女性の話とか官庁訪問のリアルとか色々と際どいことまで踏み込んだのでご勘弁を;

今週のツイート

東京医大の話とか、同僚と飲んでたら人事オタクがうざかった話とか

 最後に

メルマガ・ツイッターは以下から登録・フォローお願いします

www.mag2.com

twitter.com

メルマガ第12号&第13号&最近のツイート

7月24日付でメルマガの第12号を、7月31日付でメルマガの第13号を配信しました

今回のコンテンツはこんな感じです

第12号

[1]今週のニュースクリップ
- 児童福祉司4年で2000人増へ
- 訪日外国人 上半期過去最多
- 猛暑経済成長押し上げ
- 自民 学校にエアコン設置要望
- 自民 政調の改革案策定
[2]身の回りの話
- 異動の希望は叶うのか
[3]公共経営ラボ
[4]連載:官僚男子の落とし方(4)
[5]対話コーナー

第13号

[1]今週のニュースクリップ
- 文科省局長逮捕 霞が関騒然
- 国家公務員定年延長?
- 自民党議員LGBT発言に猛批判
[2]身の回りの話
- 職場内カップルが多すぎる
[3]公共経営ラボ
- 待機児童と保育士の待遇改善
- ラボ事務局のコメント
- 投稿募集

メルマガ第12号概要

ちょっとニュース多めです。役所の取りまとめシーズンが一周しそうというのと、政治の方でも総裁選にからめて色々と動きがあったので。本当はもうちょっと取り上げたいんですが手が回りません、、

身の回りの話は、夏の異動ラッシュということで、若手の異動希望が叶うのかどうかというテーマを取り上げてます

官僚男子の落とし方は4回目。具体的にどんな話をすると信頼関係が作りやすいのか、トーク内容について触れてます。気が向いたら実際のトークスクリプトもアップしたいと思います

メルマガ第13号概要

公共経営ラボに待望の初投稿がありましたので、そちらに力を入れました。なので連載企画「官僚男子の落とし方」と「対話コーナー」はお休みしてます。すみません

投稿の内容が保育の受け皿整備関係だったので、第13号ご覧になる際はぜひこちらの記事もあわせて読んでもらえると

smizuki.hatenadiary.com

以上、引き続きご愛顧くださいませ

最近の主なツイート

秘書課への憤り的ななにかを吐き出したりしました

この他にも色々つぶやきました。それにしても書きたいことの多さと時間が見合わん

最後に

メルマガへの登録、ツイッターアカウントは以下からどうぞ。メルマガ内にメアド載せてますので、ご意見ご要望など何でもお寄せ下さい

www.mag2.com

twitter.com

保育の受け皿を増やすには:地方を責任主体にし、権限を移譲すべき

以前からメルマガで募集していた読者投稿企画「公共経営ラボ」に、保育の受け皿整備に関する骨太な投稿*1があったので、自分の考えもここにまとめておこうと思います。投稿内容の全文とそれに対する公共経営ラボ事務局の見解はこれから配信予定のメルマガ第13号に掲載しますのでそちらをご覧ください

目次

問題の所在:保育の受け皿が足りないのはなぜか

今回の投稿では、保育の受け皿をもっと拡充するにはどうすればよいのか、という問題提起がありました。保育の受け皿が足りずに待機児童が発生している背景には色々な要因が挙げられると思いますが、根本を突き詰めると、「行政側の責任の所在が不明確だから」という一言に尽きるのではないかと考えています

待機児童は都市圏に集中

まず、保育所がどういった場所で不足しているのかを見ていきましょう

以下のマップは厚労省が公表している都道府県別の待機児童数*2に関するもので、色が赤に近いほど保育所が不足している地域ということになります

f:id:smizuki:20180729071520p:plain

一目瞭然ですが、待機児童は、東京都を中心とする首都圏と大阪近辺というごくごく一部の地域にのみ偏っていることがわかりますね。つまり、待機児童問題は本来、どちらかと言うと国全体と言うより特定地域における問題なんです

地方が地方の問題として引き受けられるように

今は国の方で少し大きく取り上げられすぎている感がありますが、まさに問題の根本はここにあると思っています。国が作った子育て安心プランの中で32万人の保育の受け皿整備が打ち出され、その数値的根拠があやふや(潜在ニーズが入っていない、等)だという議論が起こったことがあるのですが、本当は潜在ニーズまで含めて一番理解している地方じゃなきゃきちんとした数字なんて出しようがないのでは?と思います

それなのに、実態を把握しきれるはずもない国が国の問題として引き受けすぎるがゆえに、責任の所在が曖昧になっている、というのが保育の受け皿整備問題の根本原因です

解決策:問題を抱える地方が主体になれる仕組みが必要

したがって、保育の受け皿整備は問題を抱える地方が主体となって取り組んでいくことが重要です。そのかわり、ある程度保育所関係の規制を緩和するか、思い切って地方の責任のもとで自由にルールを作ってもらった上で、財源問題も含めて引き受けてもらうべきでしょう

一定のルール作りはどんどん地方に任せるべき

具体的な権限の移譲の方法ですが、保育所関係に絞ってみても、全国一律で適用する意味がどこにあるのか?と疑問視されている細かい規制は実はたくさんあります

例えば、ある保育所がよその保育所から児童を受け入れて保育する共同保育は土曜日しか認められていません。保育所一箇所あたりの児童数が少なくなるGWなどの大型連休シーズンにも合わせて共同保育を実施できるよう規制緩和すれば、激務な保育士さんたちもまとまったお休みが取りやすくなり、待遇改善につながりますよね

正直、この規制に何の意味があるのかさっぱりわかりませんし、他にもナンセンスだなと思う規制はわんさかあります。この手のルール作りは、現場を誰よりも熟知している地方にガンガン委ねていくべきです

保育所のビジネスモデルに起因する財源問題

次に財源ですが、そもそもなぜ大都市圏でばかり待機児童問題が発生するのかと言うと、端的に言えばたいして儲からないからです。以下、東洋経済から引用します*3

経営に携わると、大都市圏で保育所が不足する理由は簡単にわかります。場所を食う割には儲からない、言い換えれば土地生産性が低すぎるのです。

そもそも保育所には、国の基準を満たす認可保育所と、その基準を満たさない認可外保育所(無認可と呼ばれることもあります)の2種類があります。認可保育所の場合、0歳児(≒育休明け)には1人当たり3.3平方メートル、子ども3人に1人の保育士が必要です。これを確保しようと思うと、10階建ての保育所ができるならともかく、民間企業が参入しようと思っても採算がとれません。

もちろん、参入してくる企業はあります。どうするかというと、基本的には人件費を削るケースが多く見られます。時給1000円ほどで保育士の資格を持たない人をたくさん雇うのですが、結果として、子どもを連れて行くと、担当の保育者が替わっていたとか、公設民営で年度が替わると別の業者になっていた、といったことが起きます。

「そんなら、補助金増やせよ」と思われるかもしれませんが、若者や子育て世代の投票率が高齢層に比べて著しく低いために、政治家は高齢者をより重視します。福祉の予算を高齢者から割いて、子育て関係に回すのは至難の業なのです。

言い換えると、同じ土地に保育所を建てて補助金に頼るくらいならもっと違う土地の使い方をしたほうが合理的だ、という発想ですね

なので、引用した記事の最後のパラグラフにもある通り、最後は補助金を増やすしかないというのはその通り。権限移譲とセットで財源問題が振り付けられる場合、多くの自治体で頭を悩ませるのはこの保育所特有のビジネス構造でしょう

国の関与を減らすことで生まれるインセンティブがある

これに対しては明確な回答があるわけではありませんが、地方行財政改革にはまだまだやれることがたくさんある、というのは事実かと思います

また別の記事で書きますが、もっと効率的な行政を進めていくことで、子育て予算を増やせる余地は自治体側にもあるのです。そこで捻出した予算を保育所に回し、保育のキャパシティを増やしていくわけです。そもそもそこまで追い込まれなければ地方側だって本気になんかなりませんよ、、

いつぞやも書きましたが、しょせん国の仕事というのはあまねく2,000の基礎自治体の取りまとめに過ぎません

彼らに届かない実効性のないルールは撤廃して、彼らの責任のもとに問題解決にあたるべきです

*1:今回が初投稿になります。ピーターサム様、大変ロジカルで貴重なご提言をありがとうございます

*2:厚生労働省保育所関連状況取りまとめ」(資料4)
平成29年4月1日全国待機児童マップ(都道府県別)より。以下URL参照

https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11907000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Hoikuka/0000176121.pdf

*3:東洋経済保育所は、なぜ需要があるのに増えないのか?」

https://toyokeizai.net/articles/-/33576?page=2

都市問題としての児童虐待:人口の地方回帰、公教育の拡充を

20日の関係閣僚会議にて児童虐待に関する緊急対策が取りまとめられました

mainichi.jp

引用したニュースのタイトルにもある通り、目玉は児童福祉司数を増やすことにあるようです。短期的な当面の対策としての方向性は全く間違ってないです

ということで、この記事では、今回のような緊急の対策ではなく、もっと長期的にこの問題を根本から解決していくためにはどうすれば良いのか、大きな視点で考えたいと思います

目次

問題の背景:都市化が保護者の養育能力を奪っている

児童虐待がなぜ起こるのか、その要因は様々ですが、ひとつのとっかかりとして総務省が2010年に公表した意識調査の結果を見てみます。意識調査では、児童福祉司に対して以下のような質問をしています

児童虐待の防止等に関する意識調査

あなたは、児童虐待の発生要因は何であると思いますか。次の選択肢のうち、特に大きな発生要因であると思う選択肢を三つまでお選びください。

このうち、最も回答割合が大きかったのが、

保護者の養育能力の不足

で、回答者の6割以上がこれを選択してます

ではなぜ保護者の養育能力が不足している(と児童福祉司が認識している)のか?これは多くの議論があるかもしれませんが、文科省の白書から引用してみます(下線は筆者によるもの)

平成17年版文部科学白書

(1)家庭教育の現状

家庭教育は,すべての教育の出発点であり,子どもが基本的な生活習慣・生活能力,豊かな情操,他人に対する思いやりや善悪の判断などの基本的倫理観,自立心や自制心,社会的なマナーなどを身に付ける上で重要な役割を果たすものです。

しかしながら,近年の都市化,核家族化,少子化,地域における地縁的なつながりの希薄化など,家庭や家族を取り巻く社会状況の変化の中で,家庭の教育力の低下が指摘されています。

1地域・家庭の変化

かつて日本では3世代同居型の家庭が多く,親以外に多くの大人が子どもに接し,それらが全体として家庭教育を担っていました。地域の人々とのつながりも今より密接で,人々が子どもたちを「地域の子ども」として見守り,育てていました。そして,子どもたちも地域の年の違う子どもと接したり,幼い子どもの世話をしたりした経験を持つなど,子育てを支える仕組みや環境がありました。

しかし,都市化,核家族化,地域のつながりの希薄化が進んだ結果,今日では多くの地域で,子育てを助けてくれる人や子育てについて相談できる人がそばにいないという状態が見られます。

また,少子化が進む中で,若い世代の多くは,実生活の中で乳幼児に接したり,幼い弟妹の子守りをする機会が少ないままに大人になっています。このため,親の中には,乳幼児とはどういうものか,親として子どもにどのように接したらよいのかわからないなど,育児不安を持つ親が増えています。

2人々の意識や課題の多様化

人々のライフスタイルや意識が多様化し,それぞれが抱える課題も一様ではありません。例えば,仕事を持つ親は子育ての時間の不足に悩み,一方,専業主婦は日々の子育ての中で孤独感に悩む傾向が見られます。また,周囲の人の助けを上手に借りながら子育てをしている親もいますが,一人で子育てを抱え込みこれ以上自分自身を追いつめてはいけないというほどがんばっている親や,子育てには無関心な親もいます。さらに,離婚等により,仕事と子育てを一人で担っている親など,周囲の支えをより必要としている親もいます。

要するに、ここまでの流れを整理すると、

都市化→親が孤立→虐待

ということです

児童福祉司一人あたり虐待相談:都市ほど負荷が大きい

この仮説をざっと検証してみましょう

以下は、都道府県+指定都市+中核市において、配置された児童福祉司一人あたりの児童虐待相談件数を手元の数字で計算してみたものです*1

f:id:smizuki:20180722185413p:plain

見事に首都圏を始めとする都心部が上位に並んでいることがわかります。なお、平均値は約40件なので、大阪は平均的な自治体と比べて2倍の負荷がかかっている状態です

表にはありませんが、最下位の鳥取県児童福祉司一人あたり3.76件、ついで島根県高知県、鹿児島県と、大都市をもたない地方が並ぶので、明らかに都市問題だと言えそうです

もちろんこれには児童福祉行政の供給側である自治体側の事情*2などもあるので、完全に上記の仮説を説明し得るものではありませんが、一部の都市にのみ負荷が偏っていることは間違いなさそうです

解決の方向性

ではどうやって解決していけばよいのか。長期的な解決策と中期的な解決策を取り上げたいと思います

長期的な解決策:人口の地方回帰

今回の対策のように、児童福祉司を増やして、特に相談件数が多く負荷がかかっている都市部に多く配置することができれば、児童福祉司一人あたりのカバレッジが狭められるので、対応能力が上がるのは間違いないと思います

とは言え、単に数を増やしただけで問題がきれいさっぱり解決できるかと言うとそういうわけではありません

引用した総務省の意識調査では、都市部で発生した児童虐待のほうが地方部で発生した児童虐待よりも対応が困難だとする児童福祉司が大勢を占めており、その要因として、

都市部では、近隣関係の希薄化、密閉性の高い建物構造等により発見されにくいため悪化した状態で児童虐待が見つかることが多いから

を挙げる児童福祉司が8割以上にのぼっています

もうこうなると児童福祉司がどうとか児童相談所のあり方がどうとかいう現場レベルの話ではなく、抜本的な構造改革が必要なレベルの高度な都市問題です

東京一極集中の是正、人口の地方回帰を促す地方創生に関する一連の取組がスタートして4年になりますが、こういった地方回帰政策が長期的には最も児童虐待に効いてくるのではないでしょうか

短期の解決策:公教育の拡充

もう少し短期的な解決策だと、教育環境の整備が手をつけやすいかもしれません

以下は、公立小学校における教員一人当たり児童数と児童福祉司一人あたり虐待相談件数を都道府県単位でプロットしたものです

f:id:smizuki:20180722202951p:plain

虐待相談が多い都道府県ほど教員一人で面倒を見なければならない児童数が多い(=教員数が少ない)という特徴があります

児童福祉司児童相談所の体制強化も重要ですが、教育現場を児童の見守り手として機能させるために巻き込んでいき、児童福祉司の負荷を減らしていくというのも一つの糸口かと思います

ということで、今回はこの辺で

*1:傾向値としては正しいですが、作業の都合上正確性を少々欠いています。引用はお控えください

*2:配置したくても予算が下りない、相談所が少ない、など

氷河期世代の賃金格差:現状、解決策と政策の動向

メルマガで募集していたアンケートの中で、氷河期世代の賃金格差について書いてほしいというご要望があったので簡単に書いてみます

目次

問題の所在:定職に就けても就けなくても地獄

問題は、バブル崩壊直後に就活生だった人々が、不況のあおりで採用マーケットから大量にあぶれてしまい、スキルを身につけるチャンスを逸し、そのまま低賃金ワーカーとして滞留している点ですね

彼らの中に埋めようがない格差があることは事実で、それがリーマンショックのように比較的早く波が引くような性質のものであればまだ挽回の余地があったものの、10年近くに渡って長期化してしまったことで、取り返しのつかないことになってしまっていると

彼らを就活時に定職に就けたかどうかで切り分けると、定職に就けなかった者が多い一方で、定職に就けたとしても低賃金雇用に従事しているという現実があります。以下、それぞれについて整理します

定職からあぶれた人が多い

 有効求人倍率の推移をみてみます。下図の赤字で示しているのがいわゆる就職氷河期の採用マーケットで、リーマンショックは割とすぐ跳ね返っているのに比べるとかなり長期間にわたって就活戦線が冷え込んでいたことがわかります

f:id:smizuki:20180716215530p:plain

倍率1.0を下回れば求人に対して求職者が1人以上いるという状況なので、非常に限られた枠をめぐる争いだったことが容易にみてとれます

定職に就けても賃金は低い

もっと深刻なのはこうした激烈な就活戦線に生き残った人々も決して高待遇というわけではないという点です

下図は2011年から2016年にかけての一般労働者の所定内給与(要は長い間働いてる人の普通の給料)の変化率を表したものですが、ものの見事に赤く示された氷河期世代のみがマイナスとして出ています

2011年から16年にかけての年齢階級別所定内給与の変化率。氷河期世代のみがマイナス

平成29年版厚生労働白書では、氷河期世代のみにみられるこうした賃金の動向について以下の通りコメントしてます(下線は筆者によるもの)*1

これは、バブル崩壊後、厳しい経営環境の下で人件費抑制へのインセンティブが高まり、大企業を中心に業績・成果主義を導入する企業が増加したことが背景にあると考えられる。

バブル崩壊後の就職氷河期に就職した世代は、景気の長期低迷により大企業を中心に行われた賃金制度の見直しにより、年功的な賃金カーブが抑制された影響が現在まで続いている可能性が考えられる。

 解決策:支援施策の積み重ね

こうした現状を解決するには?と考えると、今ひとつ有効打に欠けるというか、やはり細かい施策の積み上げで多面的に支援するのが良いのかなと

ざっと思い浮かぶ限りだと以下の3種類が大きな方向性なのかなと思います

求職者のスキル開発

既存の政策ツールを活用するなら職業訓練が一番です。ただし職業訓練でできるスキルアップにも限界があるので、抜本的な賃金の改善につながるのかと問われると微妙な気もします

求職者と求人のマッチング機能強化

ハローワークがメインですが、あとは地方事業者とのマッチングとか、キャリア相談会とかですかね。個人的には民間の転職支援サービスをもっと流行らせたら良いのにと思います。抑圧された賃金カーブの外に出たらもっと良い求人がたくさんあるよということを示せば、大企業側に賃金体系を見直すインセンティブを与えることができるのではと思います

非正規から正規への転換支援

助成金を使って、半分無理やり非正規待遇職員を正規に転換するという支援策です。最終的に企業にとってメリットがでないといけないので、コストパフォーマンスとの見合いで行政側がどこまで踏み込めるのかが鍵になると思います

政府部内での検討の動向

さて、実際の政府部内での検討状況はどうなっているのかというと、2017年に決定された働き方改革実行計画*2の中では以下のような対応の方向性が示されています(下線は筆者によるもの)

就職氷河期に学校を卒業して、正社員になれず非正規のまま就業又は無業を続けている方が 40 万人以上いる。こうした就職氷河期世代の視点に立って、格差の固定化が進まぬように、また働き手の確保の観点からも、対応が必要である。35 歳を超えて離転職を繰り返すフリーター等の正社員化に向けて、同一労働同一賃金制度の施行を通じて均等・均衡な教育機会の提供を図るとともに、個々の対象者の職務経歴、職業能力等に応じた集中的な支援を行う。

これだけだとかなりアバウトな記述なので、2018年3月の労政審人材開発分科会の議論*3の中からもう少し具体的なものを取り出してみました(下線は筆者によるもの)。上記で取り上げた3つの方向性に従って淡々と施策を拡充しているんだなという感じです

  • 就職氷河期に就職時期を迎え、現在もフリーター等として離転職を繰り返す方の正社員化に向けて、短期・集中セミナーの実施わかものハローワークにおける就職支援事業主への助成措置の創設など、個々の対象者に応じた集中的な支援を行う。
  • 雇用保険法を改正し、倒産・解雇等により離職した若者に対する基本手当の所定給付日数を引上げる。

1ポツの「事業主への助成措置」というのが少々わかりにくいですが、昨年度から厚労省の方でこんな制度をスタートさせているようです*4。要は非正規→正規への転換促進施策ですね

特定求職者雇用開発助成金(長期不安定雇用者雇用開発コース)

概要
いわゆる就職氷河期に就職の機会を逃したこと等により長期にわたり不安定雇用を繰り返す方をハローワーク等の紹介により、正規雇用労働者として雇い入れる事業主に対して助成されます。

やっぱり厚労省の対応ぶりも総花的というか、積み重ねでやっていくしかないんだなという印象です

ということで、今回はこの辺で

*1:実際の白書はもう少し丁寧な考察をしてますので、詳細はこちらをご覧ください。

https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/17/dl/1-02.pdf

*2:こちらのPDFを参照

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000179750.html

*3:こちらのPDFを参照

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000196149.pdf

*4:正直に言えば遅すぎる感が強いです。at人事様のコラムに詳しいのでご覧ください。

https://at-jinji.jp/blog/5226/