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官僚日記

理想の女、理想の政策

看護師

某日23:00 池袋

くたくただ。あれから俺は猛烈に働いていた。時に朝から晩まで一睡もせずメールを打ち電話をかけ上司のお供をし会議のセッティングをした。去る金曜日、たまたま22時頃に退庁できることになったため、俺は池袋のバーで一人で飲んでいた。

ふとスマホを見るとラインが届いていた。昔の女からだ。いまは看護師になっていた。

「今日はたまたま東京に出てきているの。池袋の東横インに泊まってる。会いたい」

ひどく疲れていた。誰でもいいから抱きかかりたい気分だった。今は別の男と付き合っているであろう女と、俺は会うことにした。

女が店に着く。昔から変わっていない。あどけない顔にまんまるの目、華奢ななで肩にすらっと伸びた足。

「久しぶり。一人で飲んでいたの?」「いや、いま来たところだよ」「うそ。もう酔っ払ってる」「まさか。今日は何で東京に?」「好きなアーティストのライブ」

ふと、この女と昔一緒に聴いていた曲が思い出される。俺たちは本当に変わっていなかった。他愛もない昔話が新鮮だった。酔いと疲れでもうろうとした頭で、俺はこの女とまた昔のように抱き合えると勘違いしていた。

「そろそろ終電じゃない?」「いや、今夜は泊まるよ」「どこに?私の部屋、シングルだから入れないよ」「じゃあ、どっかで飲み直そう」「無理、あした早いから」

強引に腕をつかむ。嫌、と振り払われた。「無理、帰って」

俺は、浮気されて別れた女を昔の女に重ねてホテルに連れ込もうとする、どうしようもない男に成り下がっていた。

「ごめん、もうそういう目で見れないの」

わかった、とつぶやいて、俺は力なく駅に向かった。

すべてを酔いと疲れのせいにしてどこかに消えてしまいたかった。