官僚日記

現役若手官僚の絶叫

若手キャリア官僚の役職別業務

課長以下の役職別業務について。

【課長】課で一番えらい人。基本的に作業はせず、体外対応や下から上がってきたもののチェックがほとんどだが、重要なプロジェクトの最初の動き出しは課長が取り仕切ることが多い。この役職年次から熾烈なサバイバルレースが始まり、人事もある程度露骨になっていく。部下も一気に増えるため、突き上げを食らう数も最も多く、中間管理職としての手腕がシビアに問われる。大体45歳前後〜50歳のキャリアがつく。

【企画官】課長一歩手前のポスト。併任などで課長が不在の課では実質一番えらい人になるが、基本的にスタッフ職で特定の部下をもたない遊撃職として配されることが多い。40歳手前でこのポストになるが、ほとんど2年程度の短期間ですぐ課長になることが大半。管理職の中では最下位という位置づけで、中二階職の勉強ポストも多い。

【課長補佐】その課の実務上の最高責任者。おおよそ30歳〜40歳までで、駆け出し補佐は「えらい係長」のような仕事をしているだけだが、年次の高い補佐になると部下の人事評価権が与えられ、一気に責任も増える。その分できることが増え、雑用から解放されて仕事が面白くなってくる役職。実質的にこのあたりから出世競争が激化し出す。花形部局の総務課の筆頭補佐をこなせれば同期では頭一つ抜けた存在となる。

【係長】20代中頃〜30歳。場合によっては部下がおらず末席となることもあるが、1〜2名の部下がつき上司からも当てにされるようになるポスト。とは言えやっている内容は係員とあまり変わらず、コピー取りから日程調整・資料作成まで。たまに議員レク対応などもこなし、国会答弁作成はこの役職の人が主力となる。自分の仕事もしながら未熟な係員の指導もしなければならず、体力的には一番しんどい役職だが、管理職から意見を求められることも増え、仕事の幅は広がる。

【係員】大体入省2〜3年目まで。あらゆる雑用を一手に担い、裁量はほとんどない。朝から晩まで倒れる直前までこき使われるが、そこで倒れず生き延びることができるかどうかが役人人生最初の試金石。役所によっては地方等への外部出向が一律に課せられ、羽を伸ばせることもあるが、本省係員は常在戦場である。

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無題

国会もなく閑散としていた役所に政治家たちが戻ってきた。財務省を辞めた知人が「役人辞めたらただの人だった」と言っていたが、政治家ほどその落差を滑り落ちてしまう人種もいない。常に死と隣り合わせの緊張感は、役所にはない。だからこそ自分の立身出世にばかり目が向いてしまう。他に有り余るパワーのやり場がないからだ

月に300時間残業しようが400時間残業しようが、国民が目に見える形で喜んでくれることは絶対にない。どんなに立派な法案を通そうが、完璧な会議設計ができようが、それが国全体の利益になっているはずだと妄信できるほど純朴な役人はいないだろう

そんな組織だからこそ、曇りなき心の月を先立てて、先の見えない世界を照らしながら一歩一歩進まねばならない

官僚は無能なのか

よくある官僚無能論について。最近では不夜城霞が関で薄給ながら24時間365日国のために尽くす素晴らしい人々などという見方もちょこちょこ出てきているが、官僚無能論は未だに日本に根強い。実際に働いている人間からすると、問題の根本は非常に単純明快で、

年々業務量は膨大化していっているのに人数は削減される一方

というただ一言に尽きると思う。

基本的に役所というのはその存在の性質からしてスクラップアンドビルドが極めて苦手な組織である。基本的に彼らは「効率性」という言葉を全く重んじない。何か新しいことを立ち上げるのに理屈が必要なのはどの組織でも同じだが、鳴り物入りでスタートしたある行政サービスが何年かののちその役割を終え、明らかに当初からは注目度が低下し誰も気に留めなくなったのに、「廃止する理屈がない」という理屈で延々と続けられる行政サービスのいかに多いことか。

一方で野党は延々と公務員バッシングを続け、行政のスリム化の名のもとに定員は年々縮小されていく。これでは当然一人あたり業務量は増加し、本来注力すべき業務へのリソース配分が低下することでクオリティの低い行政サービスが提供されてしまう。

こうしてずさんなアウトプットを見た政治家と国民が「最近の官僚どもはだらしない」と騒ぎたて、もっとこの役立たずどもの人数を減らせと喧伝し、さらに少ない人数で既存のあらゆる所管業務を担当することになり、一層低質なサービスが供給され、・・・という無限地獄が繰り返されていくのである。

若手キャリア官僚の年収

官僚の年収はボーナス込みでだいたい下記の通り

・係員クラス(1〜3年目):500万

・係長クラス(4〜6年目):600万

・課長補佐クラス(7〜15年目):800万

・企画官クラス(16年目〜18年目):700万

・課長クラス(19年目〜):800万

指定職(官審)以上は明細見せてもらったことがないのでよくわからない。基本給が低い反面、若手は特に死ぬほど残業させられるため、割には合わないもののそれなりにもらえる。企画官以上になると残業代がもらえなくなるため、補佐がおわるとちょっと下がる。課長になるとまた盛り返す。手取りは上記のだいたい0.7掛けくらい

 

財務省との戦い

俺は財務出身じゃないが、まあはたから見ていてもやつらは強い。個々の人材の厚みはもちろん、よく統率された組織全体のパワーもあり、そして各省の個別予算を全て握る省としての格もやはり頭一つ抜けている

某日、とある政策のとりまとめにあたって財務協議が本格化しだした頃、見知らぬ顔の連中がドスドスと足音を立てて執務室内に乗り込んできた。なにやらうちの課長と打合せのようだ。パーティションで区切られた打合せスペースからは、開口一番「てめえ、何考えてやがんだ!」の怒鳴り声。うちの課が財務をすっ飛ばして中間報告を公表してしまったことに相当ご立腹のようだった。別にうちの省がどんな報告出そうがカンケーねえだろうと俺は思っていた

その日、俺は課長と連れ立って馴染みのバーへ行った

「俺は間違ってないと思うんです。あいつらがなんと言おうがうちはうち、この件に関してはあいつらがごちゃごちゃ言おうがうちが主導権とって回していくべきだし、やつらとは戦わないといけないと思います」

「無茶言うなよ。今も昔も、あいつらとがっぷり四つで戦って勝てる省庁なんてない。なんとか引き分けられれば御の字だろう」

課長はしんみりとマッカランをあおった。財務との協議の最前線に立ってひとり戦う課長の言葉を前に俺はそれ以上何も言えなかった

その件は以降も財務と揉めに揉め、結局は5分5分の内容で最終成果物が公表され幕を閉じた。局全体で力を入れていた思い入れの強かった政策だけに、えも言われぬもやもやだけが俺の中に残った

官僚は合コンでモテるのか

結論から言えば全くモテない。ほにゃらら省にいます〜といったところで、まず省庁の名前を知っている若くて可愛い女の子がいない。20代の女の子が平均的に知っている省庁の名前なんてせいぜい2つ3つがいいところだ。新橋や見附界隈のキャバ嬢ですら平均して3つ4つじゃないか?

それでもなお女の子たちが「官僚との合コン」にやってくるのは、普段全く表に出てくることのない、生態系の知られていない役人という生き物に対する好奇心から。官僚になったらこの鬱々とした非リア生活が変わる!なんて思ってる純朴な学生のみなさんは、もっともっと不純な動機とバイタリティをもって中央官庁を目指しましょう。

以下、一緒に合コンに行ったことのある主要省庁別の寸評。

経産省

うるさいが楽しい。財務よりも遥かに自己顕示欲が強く、その分ノリも金払いも良い印象。合コン相手が「経産省ナントカ局ナントカ課です!」とオープンしてきたらとにかくすごいやばいと褒めればイチコロ

いわゆる通商系ルートの連中は比較的スマートだが、産業系のやつらは特に前述の傾向が顕著。バイタリティは日本一、一見泥臭くてウザイが熱くて頼れる憎めないやつら

財務省

つまらない。自己顕示欲はあるくせにあんまりオープンにしたがらない傾向。主計局か大臣官房が振り出しでない場合は財務のなかでもダメなルートの人なのでそっとしておくのが吉

エリートコースにのってる連中も、聞いてもない自慢話を延々としてきたりととにかくハズレ。つーかこっちも被害食らうんでもう一緒に行きたくないっす。。

外務省

当たり。他国との渉外を任務としているだけあって女の子の扱いにも比較的慣れているやつらが多い。合コン自体は盛り上げてくれるしいやらしさもあまり感じない。財務や経産にありがちなどろどろとしたエリート意識も感じさせない

ただ表面上とりつくろっていても頭のなかでは冷徹な計算のもとどれだけおごるべきかこの後の動きはどうすべきか等々、きっちり品定めしているのでぬかりなきよう

厚労省

普通。常に訴訟リスクに晒され、残業の多い中央官庁の中でも特にストレスフルな性質の仕事が多い官庁。関係団体からの外圧と常に現場の第一線で戦っているためかヤクザな連中も多く、省庁名以上にタフで屈強。おつかれなのか合コンではあまり目立たないが、しれっと意中の相手と話し込んでたりする抜け目なさ。

農水省

意外と楽しい。地味でネクラなイメージの省庁だが、日本の農林水産を守りたいという明確な意志のもとで働くまじめな人々。エリート意識のかけらもなく、外でいきものを見つけると全てを忘れて泥の中に入っていくような純粋さ

みな何かしらマニアックな趣味を持っており、合コンでも意味不明な趣味の話で場を盛り上げてくれたりする。特に林野庁採用の人々は独自の世界を持っている印象

総務省(18年7月追記

自治系、通信系、行管系問わず全部当たり。The優等生。盛り上げるべきときは盛り上げるし、泥臭い役回りもいとわない。そのくせきっちり成果は出す。身ぎれいできっちりしている

3つの系統の中だと自治系は押しが強く少々面食らうかもしれないが、全然許容範囲内。惜しむらくは地方転勤が多くなかなか巡り会えないこと。。

国交省(18年7月追記

なんとも言えない。基本的に雰囲気は土建屋そのもの、というか良くも悪くもおっちゃんである。ハマる人はハマるのかもしれないが、あまり成果を出しているのを見たことがない。。

人柄は温厚柔和で和をもって尊しとなすタイプ。技官が大多数だが、事務官はレアな分若干スマート

詳しいことが知りたい場合

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若手キャリア官僚の1日

国会会期中か否かによる。会期中かつ世間の注目度の高い事業を担う花型部署にいて、そのとりまとめシーズンとかになると目も当てられない。

朝:8時登庁、朝っぱらからけたたましく鳴り響く電話を全てとりつつ新聞きりやら朝会のセッティングやら閣議対応やら。定時以降バンバン各種協議モノや会見録のチェック依頼やら資料作成依頼やら議員対応依頼といったメールが流れてくるので処理。同時に翌日の国会の動きも確認。

昼:15時頃コンビニに駆け込んでパンと惣菜を買う。さっさとブツを胃袋に流し込みメールと電話、各種調整業務。国会対応が激化するのがこの時間帯。

夜:ピーク時は毎晩50問くらい答弁作成を他部署に割り振ったり作ったり。この過程で大半の若手が疲弊する。答弁作成なんてリスクばかり背負わされて実にならないので誰も引き受けたがらないからだ。そこをなんとか理屈をこねこね、時には年次の高い上司のパワーも借りつつ他部署に落としていく。結果数問拾うので、ラストスパートで一気に答弁を作りつつ、他部署作成のものを審査もしつつ。気づけば朝6時、タクシーが使える時間帯を過ぎ、とぼとぼ朝の電車で帰宅。今日も眠れない。